2014年に世界文化遺産として登録された富岡製糸場の最寄駅である、上州富岡駅の紹介をします。
建物が一度見たら忘れられない特徴的で面白い形をしているので建築を知らない方でも楽しめると思います。また、建物に富岡製糸場との関係性も隠され非常に魅力的な駅舎です。
富岡製糸場に訪れた際に立ち寄るべき建築的魅力がたくさん詰まっていますので是非ご覧ください。

上州富岡駅とは
群馬県富岡市に位置する、上州電鉄上信線の駅の一つです。
2014年に世界文化遺産に登録された富岡製糸場の最寄駅として1日に約500人前後の多くの方々に利用されています。
以前は古い駅舎でしたが、富岡製糸場の世界遺産登録に向けて、新たな玄関として建て替え計画が実行され、現在TNA(武井誠+鍋島千恵)のデザインによって新しく生まれ変わっています。
設計者はコンペで決定し、応募総数359件の中から決められました。
○概要
敷地面積:1311.81 m2
建築面積:757.42 m2
構造:鉄骨煉瓦積造
最高高さ:6850mm
全長:90m
階高(改札・待合室):2970mm
○所在地
群馬県富岡市富岡1599-3
TNA(武井誠+鍋島千恵)とは
建築家である、武井誠+鍋島千恵の主宰する設計事務所です。
住宅建築で多くの実績をあげる中、この上州富岡駅舎設計提案競技で最優秀賞を受賞し、初めての駅舎建築を設計することとなりました。
上州富岡駅では、第12回ブルネル賞、2014年度グッドデザイン賞、2015年度日本建築学会賞、第56回BCS賞で特別賞を受賞するなど、日本を代表する建築家です。
デザイナーの想い
上州富岡駅の建設において、ホームと駅舎と街路と広場といった普段はそれぞれの管轄内で別々に行われた造成、建築行為を、様々な境界を飛び越えて同時にデザインした。それには富岡製糸場が建設された当時のように「つくりかた」が世間に詳らかである必要がある。今まで公共と民間に存在した境界が消え、建築の建ち方が人々に開かれた駅舎は、人々が心地よい居場所を自然と発見することのできる外部としての未来の停車場である。
GOOD DESIGN AWARD
新たな構造形式「鉄骨煉瓦積造」
富岡製糸場
上州富岡駅は富岡製糸場との共通的な素材として、レンガが特徴的な駅ですが、富岡製糸場のレンガを引き立たせるように、製糸場のレンガとはあえて異なる色彩のレンガである黄色味がかった薄茶色のものを使用しています。
駅舎全体は高さ約6.8m、奥行き11m、長さが90mとなんとも伸びやかなフラットな白い大屋根で覆われています。
その大屋根を支える鉄骨造の柱に、煉瓦積みを寄り添わせた「鉄骨煉瓦積造」と呼ばれる新しい構造形式によって、大屋根が浮遊しているように見せ、レンガという重い素材を使用しながら全体的に軽やかさを感じることのできる建築となっています。
煉瓦積み自体は富岡製糸場と同じく「フランス積み」と呼ばれる積み方としています。
富岡の景観との関係性
この上州富岡駅では、駅舎単体の設計だけでなく、歩道、駐車場、広場といった駅周辺整備も街の景観との繋がりを重視し計画されています。
具体的には、普段人々の目に触れる景観の部分である、標識やサインや照明や縁石などから全体を計画することで、今まで建築家によって独断的に決定されてしまうことの多い、街の景観についても考慮して統一を図っています。
街との関係性を大切にすることで街に馴染みながらも、どこか新しい独創的な駅舎となっています。
駅ならでは。ベンチやステージや掲示板になるレンガ
柱に寄り添っているレンガですが、建物下部では駅で待ち合わせをしている人や、電車の到着を待つ人々が座っている光景が目につきます。
駅の利用者が自然とこの建物に集まり、気軽に駅舎を利活用するできる場をつくり出しています。
構造的な役割やストリートファニチャーや人々の身近に感じることのできる役割を持ち、この富岡という地に根付いたレンガという素材を綺麗に利用した素敵な建築だと思います。
上州富岡駅舎と電車が並ぶ瞬間

線路と並行して、長く構える上州富岡駅ですが、電車と駅舎が並ぶ瞬間に写真を撮ることができます。
東京ほど電車は走っていないのでシャッターチャンスは少ないかもしれませんが、駅付近で電車のスピードも抑えているので比較的簡単に撮ることができます。
旅の記念にいかがでしょうか。
最後に
いかがでしたか。
富岡製糸場は都内からも簡単に行くことができ、最寄りからも近いので非常に利用しやすい観光地だと思います。
また、この上州富岡駅周辺には、様々な有名建築家が手がけた建築が建っているので訪れた際には是非足を運んで見てはいかがでしょうか。
ご覧いただきありがとうございました。